H30年度(2018年度)東京工業大学情報理工学院情報工学系(東工大)の3年次編入学試験についての体験記です。
はじめに
私は4年次、システム開発にハマっていたので受験勉強をほとんどしませんでした。
実質春休み(4年 -> 5年)に始めたと言ってもいい受験勉強は、習慣づけもされていなかったため計画通りに進むわけもなく、自身の不甲斐なさに落ち込むばかりでした。
そんな短期間で非効率的な勉強をした私でも東工大に受かりました。人生何があるかわかりません。
この記事を読んだあなたに、「お、これなら俺でも頑張れば受かるんじゃね?」という楽観的な気持ちが生まれてくれたらなと思います!
東工大の編入試験
東工大は、H30年度編入学試験から、学部単位でなく学院単位で募集するようになりました。
学院 | 募集人員 |
---|---|
理学院 | 若干人 |
工学院 | 9人 |
物質理工学院 | 5人 |
情報理工学院 | 2人 |
生命理工学院 | 10人 |
環境・社会理工学院 | 4人 |
(H30年度募集要項より引用)
私が受験した情報理工学院は、これまで工学部として募集人員が20人だったのですが、今年から2人になり、しんどみを隠せなかったです。
推薦入試(特別入試)があるのは生命理工学院のみで、それ以外は一般入試(数学、物理、化学、英語、面接)となります。
内申が関係あるかどうかは知りません。
志望した理由
最初は、理系最高峰の大学でかっこいいと思っていたからです。
4年次にオープンキャンパスに参加したときの研究室訪問で、ぼんやりとですがやりたい研究を見つけました。
そして、東工大に編入した先輩と話す機会があって、その人たちがとってもユニークでギークな人たちだったので、東工大に行けばそんな人たちと時間を共にできる!楽しそう!と思い受験を決めました。
(インターンや留学などに行きたい気持ちもありました!)
試験科目
東工大の試験科目は
- 数学
- 物理
- 化学
- 英語
の4つです。あと面接があります。
ボーダーは毎年6割ほどと言われています。
数学
過去の試験問題を見ればわかりますが、4つの大問があって、主に
から出る傾向にあります。
これらは、定番の問題から複雑な問題まで様々ですが、基礎を固めていれば十分正解できると思います。
難易度はそこまで難しい方ではないので、10割狙いたいところです。
物理
力学、電磁気学から2問、熱力学または波動学から1問出る傾向にあります。
難易度は一般的だと思いますが、H29とH30の電磁気学は難しかったです。基礎を固めて論理的に考えれば、十分正解できると思います。
演習を何度もやることが大事だと感じました!
私は、10割を目標にして、本番では8割近くを狙っていました(取れたとは言ってない)。
化学
化学は大学課程だから捨て教科だと言われていますが、非化学系でも勉強すれば解けるようになるので、しっかり対策すべきでしょう。
のように出題される傾向にあります。
以前はほとんどが大学課程の内容でしたが、近年無機化学や物理化学が易化傾向にあり、無機化学は高校過程の内容で対策できるかもしれません。
有機化学は、参考書を一通りやればほとんど解けると思います!
私は、8割を目標にして勉強しました。
英語
長分が2つ出題される傾向にあります。
- 英訳(並び替え)
- 和訳
- True / False
- 語句の挿入
- 類似単語の選択
- 自由英作文(40文字程度)
- 英文の適切な意味の選択
などが問われます。
普段からそれなりに英文を読んでいれば時間内に読み終わる程度の難易度だと思います。
回答に必要なスキルとしては、文法力、語彙力、単語推測力、ですかね。自由英作文の解答パターンをあらかじめ作っておくと楽です!
6割は取るぞ!と意気込んでいました。
勉強したこと
さて、試験の概要を説明しましたが「東工大の試験がどんな感じかはわかったけど、どうやって勉強すればいいの?」という疑問があると思うので、実際に私が何を勉強したかについてここで述べます。
数学
4年次の2月下旬から始めました。
微分積分、線形代数、微分方程式は高専の1~3年次に勉強できていたので、ひたすら演習をしました。
わからない問題は、似たパターンを持つ他の問題を探してきてなんとか解いていました。
月 | 勉強内容 |
---|---|
2~5 | 『徹底演習』を使った演習(一周+苦手な章) |
5~6 | 東工大と農工大の過去問(10年分くらい) |
7 | NULL |
8 | 『過去問特訓』を使った最終確認(必要だと判断した章) |
今自分で見返しても少ないなぁって思います・・・
問題を見て回答の流れをイメージできるくらいになれば、まあ OK って感じですかね。
物理
4年次の2月下旬から始めました。
参考書を読んで基礎を勉強してから演習に入る、という流れが確実でありスムーズなのですが、当時は「時間がない。やばい」という焦りが先行してよく理解してないのに演習をしてしまいました。
当然、綺麗に回答できないのでストレスもたまり、物理に対するヘイトが増すばかりでした。
参考書を読んでもわからない問題は、物理の先生に聞きに行きました。
月 | 勉強内容 |
---|---|
2~3 | 『基礎物理学演習』および『演習力学』を使った力学の演習 |
4~5 | 力学の演習、『電磁気学演習』を使った電磁気学の演習 |
6 | 力学と電磁気学の演習、マセマの熱力学 |
7 | 『基礎物理学演習』を使った熱力学と波動学の演習、東工大の過去問(5年分くらい) |
8 | 『詳解力学演習』を使った力学の演習、東工大の過去問(合計10年分くらい) |
物理の勉強は圧倒的に足りませんでした。
問題は解けるけど、根本的な理解が浅い、そんな感じでした。
私の場合、剛体や波動、電磁気などは独学で勉強する必要があったのにも関わらず、基礎を疎かにして演習ばかりしていたことが裏目に出たかなと思います。
マセマ系やビジュアルアプローチなどの参考書を駆使して基礎をしっかりと固めることをおすすめします・・・
化学
私は非化学系の人間で、元々苦手としていた教科だったので、3年次の頃から始めていました。
はじめは高校化学から入り、次に大学課程の有機化学、物理化学を勉強し、それぞれ演習しました。
弊学には化学系の学科はなかったので、わからない問題は化学の先生に聞きに行っていました。
年次:月 | 勉強内容 |
---|---|
3:5~2 | 『化学の新研究』を使った高校化学の基礎 |
4:4~1 | 『マクマリー有機化学』を使った有機化学の基礎 |
4:2~3 | 有機化学の基礎、東工大の過去問(3年分くらい) |
5:4 | 有機化学と『理工系基礎化学』を使った物理化学の基礎 |
5:5~6 | 『有機化学演習』を使った有機化学の演習、高校化学の復習 |
5:7 | 有機化学の演習、『アトキンス物理化学』を使った物理化学の基礎、『物理化学演習』を使った物理化学の演習、東工大の過去問 |
5:8 | 『大学受験Doシリーズ』を使った無機化学の暗記、東工大の過去問(合計5年分) |
有機化学は『マクマリー有機化学』を理解しながら一周して、載ってある反応をほとんどすべて覚えました。反応を多く知っておくと、頻出の「次の反応の生成物を書け」という問題は割と解けます。
物理化学と無機化学は近年易化傾向にありますが、軌道やエンタルピー変化、溶液化学、量子化学はやっておいた方がいいです(これだけをやればよいという意味ではない)。
英語
本格的に英語の受験勉強を始めたのは4年次の3月です。
長文読解は、文法力をしっかりつけていないと伸びにくいだろうと感じました。実際、文法について勉強する前と後では英文の読みやすさが違いました。
多くの長文を読むことが(慣れという意味で)大事です!
単語力に自信がなかったので、外出中は『速読英単語』の付属CDを使って単語を覚えていました。
年次:月 | 勉強内容 |
---|---|
3:4~5 | 『速読英単語 入門編』を使った英文読解 |
3:2 | TOEIC の勉強 |
3:3 | TOEIC (655)、『速読英単語 必修編』を使った長文読解と単語暗記 |
4:4~2 | 速単必修編、7月のTOEIC (690)、1月のTOEIC IP (805) |
4:3 | 速単必修編、文法の復習 |
5:4 | 速単必修編、『基礎英語長文問題精講』を使った長文読解、初過去問 |
5:5 | 速単必修編・上級編、長文問題精講、TOEIC (765) |
5:6 | 速単上級編 |
5:7 | 『ドラゴン・イングリッシュ基本英文100』を使った英作文、速単上級編、『東工大の英語』(赤本)を使った長文読解 |
5:8 | 英作文、赤本 |
英文法、長文読解、英作文、単語の4つの要素をそれぞれ勉強すればいいと思います。参考書は大学受験のもので十分です。
英語に関しては、過去問を解くのもいいのですが、日本語訳と模範解答がないのが困ります。
大学受験で使われる赤本は、編入試験のレベルと同程度かそれ以上の長文が15年分も載ってあり、日本語訳も模範解答もあるので強くおすすめします。
編入試験当日
試験前日
前日は15時頃に東京に着き、ホテルで最後の復習をしていました。
ホテルは東横INN品川旗の台駅南口にしました。他の高専生も数名泊まっていたようです。
九大の編入試験で知り合った友人と一緒に松屋で夕飯を食べ、夜はたぶんささっと寝ました(記憶があいまい)。
空港やホテルにいるとき、緊張で胃がキツかったのを覚えています。
試験一日目
試験開始1時間前には会場に着いていたと思います。
受験生は合計100人ほどで、留学生グループが仲良く話しててちょっと怖かったです。
情報工学系の受験者は11人だった気がします!(わからん)
以下、詳しい試験内容は実際の問題を見てください!(問題書くのはめんどくさいので)
- 数学(9:30-11:30)
最初の試験なので緊張していましたが、順調に解くことができていました。
途中鼻血が出て、焦りました・・・試験中に血まみれになりました。(ご迷惑をおかけしました。)
そして、これは間違えられないだろ!と言われそうな二重積分の計算問題を間違えたんです。昼休みに絶望しました・・・ほんとに・・・
予想は7割。
- 昼休み
松屋仲間の友人と一緒にいました。数学のミスはツラいなぁという話をしました。
- 物理 (13:00-14:30)
電磁気学が電気回路の問題で、一問も解けませんでした。
私ができなかったんだからみんなもできてない!という思考には至れませんでした・・・
試験が終わった後の目は死んでた。ここで基礎が大事だと思い知らされました。
力学もミスったので、予想は4割。
- 化学 (15:00-16:30)
無機化学で覚えていない項目もあったり物理化学で少し間違えたりもしたんですが、有機化学は勉強した分できたので嬉しかったです(小並感)。やっぱり易化傾向にあるのかな。
一日目最後の教科が物理じゃなくて良かったです・・・化学に命(物理)を救われました。
予想は8割。
- 試験後
夕飯はホテル近くの店でかつ丼を食べました。おなか壊す確率が高いのでおすすめしません。
夜は、数学と物理を引きずったまま勉強も捗らず、ほぼ何もできずに寝ました。
試験二日目
一日目と同様、早めに行き、速単や赤本を触っていました。他の受験者のことはあまり気にならなかったです。
- 英語 (10:00-11:30)
長文が2つあり、「もし天才発明家がいなくても、代わりに誰かが同じ発明をしていた」という内容の文と、人としての強さを表す「パーソナルパワー」についての文でした。
冷静に読めたので一応時間内に解き終わりました。最後に「パーソナルパワーを持っていると思う身近な人について説明してください」という英作文の問題があったのですが、時間が残り少なかったので poor な英文になっていた気がします。
もう少し英語でアウトプットするスキルをつけた方がよかったと感じました。
予想は7割。
- 面接
各系で集合時間が違いました。受験者が多いほど早い印象です。
情報工学系は全員待機室に集められ、面接の説明が行われたあと、受験番号の昇順に始まりました。
だいたいひとり10分だったと思います。
面接官は3人で、雰囲気は和やかでした。
私は、以下のことを聞かれました。
・高専では何を勉強しましたか。
・高専在学時に得意だった科目は何ですか。
・英語の試験の出来はどうでしたか。
・英語の一つ目の長文の内容を教えてください。
・英語は得意ですか。TOEIC はどうですか。
・志望動機を教えてください。
・併願した大学はありますか。
・受かったらどの大学に来ますか。
・他大学のオープンキャンパスには行きましたか。
・数学の試験はどうでしたか。
・物理と化学ではどちらが得意ですか。
・卒業研究では何をしていますか。
・将来なりたい職業は何ですか。
「東工大で何をしたいか」という質問がなかったので、正直不合格だと思っていました。
面接終了後は各自解散です。
試験を終えて
合格者は、合計27人、うち情報理工学院3人(数理・計算科学系が1人、情報工学系が2人)でした。
勉強内容についての言及にいきます。
これは勉強全般に言えることですが、完璧だと思っても必ず油断という穴があります。どんな状態でも問題に正確に回答するためには、何度も演習する必要があります。私は前述した通り、繰り返し演習したわけでなく必要最低限の演習をしました。その結果、試験当日に多くのミスが生まれました。受験生にとっては基本中の基本だと言われるかもしれないのですが、同じ演習本を繰り返し使うことが重要なのではないかと思います。
受験勉強というものは、誤答率を減らすための勉強だと言ってもいいのかもしれませんね。
それと、数学、物理、化学の試験を終えた後、勉強した量が試験の出来にそのまま反映されると感じました。私の場合、数学の一部と有機化学の勉強量が試験に良いように反映され、物理の勉強量が試験に悪いように反映されました。つまり、勉強がんばってください。
以上です。
おわりに
はじめに「お、これなら俺でも頑張れば受かるんじゃね?」という気持ちになってほしいと言いましたが、なりましたか?
なってなかったら私の力不足です。
メンタル的には楽観的に考えるのが一番ですので、ご参考までに!
勉強方法と内容についてはあまり参考にならなかったかもしれませんが、編入試験における情報はさまざまな体験談を見ることによって得られます。その中の一つになれていれば嬉しいです。
本記事中に載せた勉強時間のグラフは、勉強記録アプリ Studyplus の記録を使って作成しました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!